桔梗で染めた指で窓を作ると、そこに会いたかった、今は亡き人が現れるという物語。
・・・すると、今度は窓の中に雨が降っています。細かい霧雨が音もなく。そしてその奥になつかしい庭が見えてきました。・・・
その庭に母が出てくるのでは、と主人公が期待する場面は何回読んでも美しく、切なく、胸をかきむしられます。
どうにもならない現実、そして自分で自分の心の井戸を覗き込むような孤独感を豊かな色のイメージでもって、思いがけない結末へと導びいていく。
安房さんのどの作品にも感じられる、この孤独感が現代のどの大人にも符合するように思います。
この「きつねの窓」に衝撃を受け、安房直子作品を多くの人に朗読で届けようと心に決めました。
単純な文章でありながら、イメージがありありと色を伴って浮かんできます。
また、ファンタジーでありながら、ハッピーエンドが実に少なく、切ないものが多い。
あの世とこの世を簡単に行き来してしまう、まさに生と死は隣り合わせ。
そして、孤独です。
何をしても埋めようがない孤独を、誰しもが持っているということ。
これは児童文学でありながら、特異な点ではないでしょうか?
死ぬまで抱え続け、あやしながら生きていかなければならないことを、最も感性の鋭い、多感な時期に問いかけています。
1943年東京都出身。日本女子大学国文科卒業。在学中より山室静氏に師事。
1970年、「さんしょっ子」で日本児童文学者協会新人賞を受賞後、美しい文体で独自のファンタジーの世界を書き続けた。
『<小夜の物語>花豆の煮えるまで』で、ひろすけ童話賞および赤い鳥文学賞特別賞を受賞。
『きつねの窓』『ねずみのつくったあさごはん』など教科書に多く掲載されている。
1993年2月25日、肺炎のため永眠。
享年50歳。